危機に瀕する沖縄の自然を守ろう!

〜フォーラム「いよいよ沖縄の自然があぶない」に170人〜




 八重山・白保の海を守る会、北限のジュゴンを見守る会、全国自然保護連合、日本消費者連盟の4団体は(2004年)7月25日、フォーラム「いよいよ沖縄の自然があぶない!」を東京で開きました。沖縄のかけがえのない自然が公共事業や新たな基地建設で重大な危機に瀕していることから、その現状を多くの人に知ってもらうために開いたものです。「南部労政会館」(ゲートシティ大崎・ウエストタワー2階)の会場は、170人の参加者で満杯でした。


 ●沖縄の自然がもつ力を日本人はわかっていない


 最初は、宇井純さん(沖縄大学名誉教授)による基調講演「沖縄の自然をどうする!」です。宇井さんは、こんなことを述べました。
 「沖縄の環境問題は基地問題とのつながりが非常に深い。在日米軍基地の70%が沖縄に集中している。膨大な米軍基地が沖縄に集中している代償として、政府は他の地域に比べてはるかに手厚い公共事業を投入する。そうした公共事業が赤土を流出させ、海を汚染していく」
 「海岸部の多様な自然景観などを考えると、観光地としての沖縄の価値はたいへん大きい。とくに珊瑚礁の海は、その多様な生物種の豊富さにおいて、陸上の熱帯雨林にも相当するといわれる複雑な生態系をつくっている。しかし、この沖縄の美しい自然が人を引きつける力を日本人はよくわかっていない」
 「いろいろな事業は、沖縄のすぐれた自然を長持ちさせる方向にはなされていない。逆に、泡瀬干潟のようにすぐれた自然景観をわずかばかりの金のためにつぶしてしまう計画が進められている。時間とともに大きくなって行くであろう沖縄の自然の観光的価値を、少しばかりの金に換えてしまうのは本当に惜しいことであり、この島で持続して生きる方法をこれから探さなければならない」


 ●サンゴ礁、ジュゴンなどが重大危機に


 講演のあとは現地報告です。「八重山・白保の海を守る会」の比嘉照子さんと生島融事務局長は、白保サンゴ礁の問題を報告。世界的にサンゴ礁の危機が叫ばれている中、新石垣空港建設計画(カラ岳陸上案)は貴重な白保サンゴ礁に取り返しのつかない重大な影響を与える。また、カンムリワシやカグラコウモリなど希少な野生生物を絶滅の危機に追いやる──と訴え、計画の見直しを求めました。
 「沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団」の東恩納琢磨団長たちは、普天間代替施設のボーリング調査を阻止するために座り込みを続けています。名護市辺野古沖のサンゴ礁を埋め立てる普天間飛行場代替施設建設計画は、希少な海棲哺乳類ジュゴンの生息地を破壊し、絶滅に追いやるものだからです。東恩納さんは、「国際保護動物のジュゴンに悪影響を与えて外国から信用されない日本になるのか、そうでない国にするのかの瀬戸際だ」と訴えました。
 「泡瀬干潟を守る連絡会」の前川盛治事務局長は、埋め立て予定区域で新種や希少種の動植物が続々見つかっていると報告。「それなのに、残念ながら埋め立て工事がはじまっている。泡瀬干潟は数多くの新種、貴重種、重要種が生息する沖縄に残された最大の干潟である。そこを埋め立てるバブル期の開発計画はただちに撤回すべき」と訴えました。
 「西表の未来を創る会」の富田京一さんは、「昨年は5回あった砂浜でのウミガメの産卵は、ホテル建設後の今年は1回もない」と話し、「西表島の自然と文化を破壊する『本土』資本の大型リゾート開発の撤回を求める」と訴えました。


 ●人間が生きていくためにも自然を大切にすることが必要


 現地報告のあとは、「寿」(ナビィ&ナーグシク ヨシミツさん)によるミニコンサート「沖縄民謡&オリジナルソング」です。二人は、「自分たち人間が生きていくためにも自然を大切にすることが必要。沖縄の大切な自然を守るために、唄をつくり唄っていきたい」と述べ、「高那節(ざんざぶろう)」「安里屋ユンタ〜真謝節」「我ったーネット」の3曲を唄ってくれました。たいへん感動的で、大好評でした。
 パネルディスカッションのあと、集会アピールを採択し、閉会しました。翌26日は、沖縄の団体が環境省、国交省、防衛施設庁、内閣府へと要請と質疑をおこないました。




集会アピール



フォーラム
いよいよ沖縄の自然があぶない!
〜白保・辺野古・泡瀬・西表島〜

 私たちは、日本の南西端に位置する琉球列島──沖縄の類い稀なる風土と自然をこよなく愛し、その貴重な自然生態系をこれ以上損なうことなく次の世代に残したいと願っています。
 しかし、私たちの愛するこの沖縄の自然は、いよいよ、最大の危機に瀕しています。1972年の「本土」復帰以降、湯水のように投入された公共事業や米軍の演習、そして新たな基地建設などによって、この生物多様性の宝庫である貴重な生態系は、無残にもことごとく破壊されました。
 豊かな森はブルドーザーや砲弾によって蹂躙され、流出する赤土は海を汚し、またサンゴ礁や干潟は次々と埋め立てられました。長い年月をかけて作られた沖縄の貴重で特異な自然生態系は、わずか30年余の間に限られた地域だけにしか存在しなくなりました。そして、そこに生息する希少な生き物も絶滅の危機にさらされています。しかしそれにもかかわらず、今もなお新たな開発や基地建設による自然破壊はとどまることをしりません。
 今すぐ無駄な公共事業や基地建設をストップしなければ、世界的に貴重な沖縄の自然は永遠に失われてしまいます。そして沖縄は、自然の豊かさや平和とほど遠い島になってしまうことでしょう。ほんとうの沖縄の自立を考えたとき、かけがえのない自然を破壊するのではなく、それを大切に守り活かしていくことこそ求められているのではないでしょうか。
 本日のフォーラムにおいて私たちは、沖縄の自然の素晴らしさを再認識する一方、その破壊の現状に心を痛めています。世界的に貴重な沖絶の自然は、人類だけのものではなく、ましてや沖縄や日本だけのものでもない、生きとし生けるものすべての宝物です。
 私たちは、沖縄がコンクリートで固められ、かけがえのない自然を失い、そして軍事要塞化された島々になることを決して望みません。また、無駄な公共事業や「本土」資本によるこれ以上の環境破壊を決して許しません。沖縄が平和で豊かな自然に恵まれた島々として生きていくために、日本全国の人々が力と知恵を合わせていくことが必要と考えます。
 沖縄の素晴らしい自然を未来の子供たちに受け渡していくために、以下のことを日本政府と沖親展に牽く求めます。

  1. 沖縄の貴重な自然生態系を保全するために、新たな立法措置を含めて、法律や条例による保護区の増設を急いでください。
  2. 世界的にサンゴ礁の危機が叫ばれている中、新石垣空港建設計画(カラ岳陸上案)は貴重な白保サンゴ礁に取り返しのつかない重大な影響を与えます。またカンムリワシやカグラコウモリなど希少な野生生物を絶滅の危機に追いやります。ただちに計画の見直しを求めます。
  3. 名護市辺野古沖のサンゴ礁を埋め立てる普天間飛行場代替施設建設計画は、希少な海棲哺乳類ジュゴンの生息地を破壊し、絶滅に追いやるものです。ただちに計画を撤回し、ジュゴンの保護策を検討してください。
  4. 泡瀬干潟は数多くの新種、貴重種、重要種が生息する沖縄に残された最大の干潟です。隣接する自由貿易地域の浚渫土砂処分場として埋め立てる、バブル期の開発計画はただちに撤回してください。
  5. 西表島の自然と文化を破壊する「本土」資本の大型リゾート開発の撤回を求めます。
  6. やんばるの森は長い時間をかけて育まれた貴重な自然生態系です。米軍のヘリパッド基地建設や新たな公共事業は、その生態系を破壊し固有種の絶滅を招きます。すべての計画の撤回を求めます。
 2004年7月25日

フォーラム「いよいよ沖縄の自然があぶない!」参加者一同











会場満杯の170人が参加








沖縄大学名誉教授の宇井純さん








「八重山・白保の海を守る会」の比嘉照子さん








「八重山・白保の海を守る会」の生島融事務局長








「沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団」の東恩納琢磨団長








「泡瀬干潟を守る連絡会」の前川盛治事務局長








「西表の未来を創る会」の富田京一さん








パネルディスカッション








「公共事業チェック議員の会」の佐藤謙一郎事務局長(民主党衆院議員)。佐藤議員は、翌26日におこなわれた環境省、国交省、防衛施設庁、内閣府への要請と質疑に尽力してくださった。








寿(ナビィ&ナーグシク ヨシミツさん)によるミニコンサート「沖縄民謡&オリジナルソング」。「高那節(ざんざぶろう)」「安里屋ユンタ〜真謝節」「我ったーネット」の3曲を唄ってくれた。









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