八ッ場ダムは日本一の金喰いダム

〜ストップ!八ッ場ダム 住民訴訟スタート集会〜





 12月5日、東京で「ストップ!八ッ場(やんば)ダム 住民訴訟スタート集会」が開かれました。主催は「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」です。280人が参加しました。


 ●八ッ場ダムへの負担金支出は地方財政法などに違反



 集会では、石井ヘンドリックスによるミニコンサートのあと、全国市民オンブズマン連絡会議の大川隆司弁護士が「八ッ場ダム住民訴訟の意義と展望」と題して原告団アピールをおこないました。
 大川弁護士は、八ッ場ダム事業費を関係都県が負担することの違法性を述べました。利水上、治水上の必要がないのに各都県が負担金を支出するのは、「地方公共団体は、その事務を処理するにあたって、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要かつ最少の限度をこえて支出してはならない」とする地方自治法や地方財政法の要請に反している。また、利水事業からの撤退はペナルティなしに実行できるのに、それを行使しないのは不適切な財産管理(地方財政法8条)として違法──などというものです。
 また、被告側が、「利水上の必要性」などの実質的争点についての論争は不利と判断していることから、「門前払い」論とのたたかいが第一段階になることなども話しました。


 ●ダムは、治水にほとんど役にたたない



 つづいて、治水研究の第一人者である大熊孝・新潟大学教授が「八ッ場ダムは利根川治水にとって必要か」というテーマで講演しました。大熊教授は、利根川治水計画の内容などをくわしく説明し、次のようなことを述べました。
 「ダムが治水に役立たないことは建設省(現国土交通省)もよく知っている。しかし、利水目的だけではダムが建設しづらいので治水もダム建設の目的になっている」
 「ダムが治水に役立たないことは先の新潟県の洪水被害でも実証された。被害地の上流にダムがあるが、まったく役に立たなかった」
 「カスリン台風の洪水被害をきっかけとして、八ッ場ダムなどが利根川上流部に計画された。しかし、カスリン台風と同じ台風が来ても、八ッ場ダムの効果はゼロだ。これは、国交省自らが内部資料で認めている」


 ●首都圏は水余りになっており、ダム建設は不要



 利水の専門家である嶋津暉之さん(水源開発問題連絡会)は、首都圏の水需要は横ばい、あるいは減少傾向であり、水余りになっていることをデータで示しました。しかし、国交省は今後も水需要が増え続けると予測しており、ここに大きな問題があることを明らかにしました。


 ●地盤崩壊や地滑りの危険性が高い



 土木工学にくわしい矢部俊介氏は、ダムサイト両岸の岩盤に亀裂があることや、湖水域が地滑り地帯であることを明らかにし、八ッ場ダムの危険性を強調しました。
 国交省の資料を情報開示請求で手に入れたところ、ダムサイトの取り付け部両岸に高さ100メートル以上に及ぶ大きな垂直亀裂が走っていることがわかりました。また、ダムサイト予定地の岩盤は高透水帯(こうとうすいたい。水を透すすきまのこと)が非常に多く、すごく危険です。たとえばアメリカのマルパッセダムでは、ダムサイトの岩盤とダムが崩壊したため、下流住民の420人余りが犠牲になったそうです。
 このあと、以上の3人によるパネルディスカッションなどがあり、八ッ場ダムがいかにムダで、危険であるかが鮮明にされました。
 最後に、「八ッ場ダム計画の息の根を止めるまで、私たち首都圏住民は共に手を携えて闘いぬきましょう!」とする集会宣言を採択しました。




集会宣言




 八ッ場ダム計画、これはなんと愚かで無駄な事業でしょうか!
 計画より半世紀、現地の人々の生活を破壊し、山を切り崩し、沢を埋め立て、税金を湯水のように投入し続け、それでも今なお、八ッ場ダムは本体工事着工の目途すらたっていません。 首都圏もこれからは人口減少の時代に入り、新たな水源開発の必要性はとっくに無くなっています。利根川の洪水防止にも、八ッ場ダムは何等の有効性も持ちません。それなのに、この日本一の金喰いダムは、国民に約9千億円、いずれは1兆円を超える負担を強いることは必定です。
 川の流れをせき止め、国の名勝である美しい吾妻渓谷を台無しにしてしまう八ッ場ダム、地滑りやダム決壊などの大災害が起きる危険性をつくり出す八ッ場ダム。─子孫に取り返しのつかない負の遺産を残すダム事業を何としても見直してほしい、長年の苦難を耐え忍んできた地元の人たちが未来ある生活を取り戻すためにこそ税金を投入してほしい、そのような私たちの思いを結集して、去る9月10日、5400人もの住民が関係各都県に八ッ場ダム計画からの撤退を求める住民監査請求を行いました。
 この監査請求に対して、各都県の監査委員は審理もせず、門前払いというべき却下または棄却の結果を出しました、監査請求制度は一体何のためにあるのでしょうか。監査委員は何のために存在しているのでしょうか。監査事務局、官僚の操り人形になっている監査委員に対して、私たちは強い憤りを覚えます。
 このような民主主義の危機を打開したいとの思いをこめて、11月、私たちは、各都県が八ッ場ダム計画から撤退すること、すなわち、八ッ場ダムの中止を求める住民訴訟を一都五県で起こしました。法廷の場には、被告の各都県だけでなく、事業主体である国土交通省をも引きずり出して、八ッ場ダム計画の欺瞞性、問題点を徹底的に追及していこうではありませんか。
 もちろん、裁判の審理だけでは八ッ場ダム計画を中止させることはできません。「こんなにひどいダム計画がなぜ中止にならないのだ!」という怒りの声が裁判所を取り巻く状況になってこそ、まっとうな判決が期待できます。
 現在、八ッ場ダム反対の声は日を追うごとに大きくなり、賛同の輪が急速に広がっています。全国の、また世界の脱ダムの動きとも連帯してこの勢いをさらに拡大し、八ッ場ダム計画の息の根を止めるまで、私たち首都圏住民は共に手を携えて闘いぬきましょう!

 2004年7月25日

ストップ!八ツ場ダム 住民訴訟スタート集会 参加者一同















集会には約280人が参加








パネリストのみなさん








八ッ場ダムの住民訴訟を起こした1都5県の代表のみなさん









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