放射性物質が下水処理施設に集まってくる


崎田 宏






 「あちこちで放射能が検出されてるけど、うちの下水処理場は大丈夫かい」
 「大丈夫なわけないだろう。早く測定して公表しないとまずいよ」
 「昨日も、下水汚泥や灰を捨ててるようですけど放射能は大丈夫なんですか、という電話が住民からあったし」
 4月中旬、首都圏のある下水処理場での作業員の会話です。


★下水汚泥焼却灰の受け入れをセメント工場が拒否

 次の日、下水汚泥の焼却灰を受け入れてもらっているセメント工場から、「放射能問題により、今後は灰の受け入れができない」という連絡がありました。
 「えー、どうすんだよ。灰を外へ出せないとすると、下水処理場敷地に袋かなんかに入れといて置いとくしかないのかあ」
 「東電に引き取ってもらうしかないだろ。あいつらがまき散らしたんだから」
 またまた、頭の痛い問題がやってきました。


★3月ははるかに高い数値だったはずなのに…

 5月中旬に測定結果がでました。脱水した汚泥の放射性ヨウ素131は50ベクレル/kg、放射性セシウム134と137の合計は600ベクレル/kgでした。焼却灰は、放射性ヨウ素131は検出されず、放射性セシウム134と137の合計で2万ベクレル/kgでした。
 この数値は5月のものですから、3月ははるかに高い数値だったと思われます。3月と4月にセメント工場に搬入された焼却灰はどう処理されたのでしょうか。セメント製品として出荷されたものもたくさんあるでしょうし、建物などのコンクリート材になったものもあるでしょう。下水道には環境中のいろいろの物質が集まってくるという当たり前のことと放射性物質を結びつけて考えることが、どこかへ飛んでいたことが悔やまれます。


★「政府は早く指針をだせ!」

 国の指針では、10万ベクレル/kgを超える下水汚泥は焼却のうえ容器に保管するのが望ましいとあります。しかし、それ以下の数値であっても持っていく先がない以上、保管しておくしかないのが現状です。
 放射性物質を含んだ下水汚泥・焼却灰の処分方法の明確な基準がない、作業員の安全確保のための基準もない、汚泥・焼却灰を肥料やセメントなどに再資源化するときの基準もない──。そこで、「総理大臣、環境大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、国土交通大臣は早く指針をだせ! でないと、身動きできなくなる」と要望をぶつけているところです。


★「人間が制御できない原発はやめてくれ!」

 気づかないうちに、放射性物質があらゆるルートを通じてあらゆる場に広がっています。さまざまなものを受け入れている清掃工場も同じ問題をかかえているでしょう。
 近く、指針が示されると聞いていますが、指針自体の問題も含め、あいまいな解決はゆるされません。
 「人間が制御できない原発はやめてくれ!」
 これが作業員の声です。

(2011年5月)





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