伊方原発を再稼働させていいのか!


環瀬戸内海会議 共同代表 阿部悦子(愛媛県議会議員)





12月1日、8千人が松山に集う

 2011年5月5日、日本全国の原発が止まった。このまま「脱原発社会」を継続するため、全国の仲間が満身の力を込めて活動している。愛媛県でも2013年12月1日、松山市で「フクシマを忘れない」を合言葉に「NO NUKES えひめ」を開き、県内の集会では前代未聞の8千人を超える人々が集まった。
そのような中でも、四国電力は「一刻も早い3号炉の再稼働を」と言い続けている。伊方原発の3号炉はウラン炉に較べて事故時に燃料が溶け出しやすく、放射性物質を放出する能力も高いプルサーマル炉である。
しかも伊方原発は、中央構造線活断層と南海トラフという2つの大地震帯に挟まれ、汚染水は内海に長期間溜まるなど、東日本大震災以上の惨状も予見されている。

(1)中央構造線活断層直近に「想定外」で作った伊方原発

 伊方原発は、45qという日本で最も長い半島の付け根にある。この半島の6〜8km沖を並行して走り、600kmもの長さを持つ、世界最大級といわれる中央構造線活断層が存在するのである。しかし、伊方原発建設時には、これを「活断層ではない」として設計され、運転されてきた。
 高知大学の岡村眞教授によると、この海底活断層は2千年周期で活動しており、九州や四国東部で400年前に動いたのは確かだが佐田岬沖は空白地帯であるという。まさに伊方原発も福島第一原発1号炉と同様、強振動や津波、地盤などの知識が未熟な時期に設計され、発電所が建った後で「耐震評価」の数字合わせをしてきた原発なのである。
さらに怖いのは、震源直上の伊方原発でいざという時に制御棒が作動せず、緊急停止ができないことも想定される。また活断層直上の複数の変電所と高圧送電線が同時に被災して大規模長期停電からメルトダウンに至る危険性も見過ごしにされている。

(2)南海トラフ巨大地震による原発震災を「想定」外に

 国は、今回の東日本大震災を受けて「南海トラフ」の大地震を想定し、津波地震を含む巨大地震が起こる可能性を指摘した。そして、あらたにM9.1の想定を各自治体にも求めた。大地動乱時代の南海トラフ地震はいつ起こっても不思議ではないというのだ。しかし、この地震によって引き起こされる「原発震災」が想定されていないのはなぜか。その疑問に一切答えようとしない四電、愛媛県、原子力規制委員会のあり様は、本気で市民の命を守るものとは思えないのである。
しかも、この南海トラフ大地震によって中央構造線活断層帯の活動が誘発されることもあるというのだ。伊方原発を再稼働した後での被害想定など、誰も出来ないでいるのだ。

(3)米軍戦闘機が上空を飛ぶ、飛行機墜落のリスク

 2013年3月30日、伊方原発の上空で米軍哨戒機P3Cの飛行機を四電が発見し、国に報告した。県民は1988年に伊方原発直近のみかん畑に米軍大型ヘリが墜落して乗務員7人が死亡した事件を思い出し、身震いした。しかも、新たな日米合同訓練のため、さらに多くの米軍機が岩国と普天間の間を飛び交い、四国の上空のオレンジルートでの演習強化が懸念される矢先だ。今年3月以降、オスプレイも愛媛県内の各地で頻繁に目撃されている。
米軍用機が原発や人口密集地などの上空を避けて飛ぶことは「日米合意」の中で努力事項に留まっており、本来なら義務事項になるまで再稼働はありえないと思うのだが。

(4)事故時に避難できない佐田岬半島で5千人が孤立

 私は、9月の終わりに、原発から東側にある、伊方原発から5キロ10キロ圏の4つの集落に「あなたは、安全に逃げられますか」というチラシを配って歩いた。これらの集落の200軒を訪ねるのに6時間かかるほど、たくさんの家が蔦(つた)や木に占領され多くの空家が残されていた。この間、子どもには一人しか出会わず、店も病院も学校も一つもない。
 急な階段や細い坂道を登りつめたところに高齢の方が住んでいる。愛媛県が設置した「急傾斜崩壊危険区域」の看板もあちこちにある。自転車も車いすも使えない。しかし、眼下には息を飲むほど美しい瀬戸内海が広がっている。出会った高齢者は、「こんなとこから、どうやって逃げるん」「私ら、あきらめとる」などと言う。
 議場でこのことを質問すると、県は「投入可能な陸海空(自衛隊)のあらゆる手段を使う」と答えた。現場を知らない「たわごと」である。

(5)狭い伊方原発敷地内には汚染水タンクを設置できる土地がない

 私は、10月に行われた県議会本会議でこの問題を問うたが、県は「汚染水の発生がないよう四電が安全対策を講じている」と答えた。これは間違い、そしてごまかしである。なぜなら、四電が7月に再稼働申請をした時に、「基準規則15条」にのっとり、「工場等外への放射性物質の拡散を抑制するための設備」として、「排水設備の隔離、土のうの設置及びゼオライトによる……海洋への放射性物質を抑制」と記述しているのである。「土のう」とは!
伊方で過酷事故が起これば、汚染水には手の打ちようがなく、直接瀬戸内海に流れ込むことは疑う余地がない。

瀬戸内海の特殊性に鑑みる

 瀬戸内海はかつて「魚湧く豊穣の海」と言われたが、戦後の高度成長期を経て埋め立てや海砂の採取、廃棄物の持ち込みなどにより漁獲高が落ち込み、貧酸素水塊が広がるなど、問題を抱えている。それでも瀬戸内海は今も瀬戸内住民3千万人の食糧庫であり、多様な文化や人々の営みが息づく恵みの海である。
 この海は「閉鎖性水域」と呼ばれ、海域の水は数年入れ換わらない。フクシマでは汚染水が一方向に流れているのに対して、瀬戸内海の水は「往復流」となって移動を繰り返し、狭い「瀬戸部」では鉛直方向に混合されて隣の広い「灘」に入る。その過程で海底に沈殿するなど、汚染水や空から降下した放射能が長い時間留まると考えられる。日本の中でも特殊な海域なのである。
 内海に建設された原発は、世界で伊方原発しかないという。このような伊方原発は再稼働させず、「原発のない」現在を未来に引き継いでいきたい。全ての原発を廃炉に!

(2013年12月)






国会正門前で伊方原発の再稼働中止を訴える阿部悦子さん









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