生態系よりカネ儲けが大事

〜鳥取の湖山池と東京湾〜

中山敏則





 湖山池(こやまいけ)は鳥取市の北部にある汽水湖です。「池」が付く湖沼の中では日本最大の広さです。鳥取県内では、中海の次に大きい湖沼です。
 2015年7月、「鳥取自然保護の会」の案内で湖山池を見学しました。


塩分上昇で生態系が激変

 湖山池はいま、塩分上昇による生態系の変化が問題になっています。湖山池から日本海に流れる湖山川の水門を開放しているからです。
 2012年以降、海の水位が湖山池より高い「逆流時」も水門を開放するようになりました。そのため、海水が湖山池に逆流し、湖山池の水位が上昇しました。塩分も大幅に上昇です。
 その結果、フナやコイの産卵場所であったアシが枯れてしまいました。
 トンボの種類は激減です。湖山池にいた淡水貝13種は湖山池内から消失したそうです。イシガイ類などです。絶滅危惧種のカラスガイも全滅しました。野鳥の繁殖も激減しています。
 フナやコイが大量に死んだこともありました。塩分が濃くなると、フナやコイは池から逃れて小さな流入河川に逃げます。一斉に折り重なってさかのぼろうとしたため、酸欠や病気で死んだのです。


生態系よりシジミ漁を優先

 「逆流時」における水門開放はシジミ漁が目的です。湖山池のシジミ漁を盛んにするため、地元漁協が水門開放を強く求めています。
 一方、「鳥取自然保護の会」などの自然保護団体は、湖山池の生態系を守ろうと、「逆流時」の水門開放をやめるよう県に求めています。ところが、県は漁協の要求を重視です。つまりは「生態系よりカネ儲けが大事」ということです。


東京湾も同じ構図
  〜三番瀬と盤洲干潟〜

「生態系よりカネが大事」「湿地保全より儲けが優先」。これは東京湾の三番瀬(さんばんぜ)や盤洲(ばんず)干潟でみられる構図と同じです。
 三番瀬は三番瀬保全団体がラムサール条約登録を、盤洲干潟は「小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会」が県の自然環境保全区域指定を強く求めています。貴重な干潟や浅瀬を恒久保全するためです。
 ところが、どちらもなかなか実現しません。地元漁協が強く反対しているからです。
 漁協は、反対の理由として「漁場再生が先」とか「カワウによる漁業被害が増える」をあげています。しかし、これらは建前です。本心は「カネ儲けが大事」です。


東京湾アクアライン建設で247億円の補償金

 たとえば盤洲干潟です。盤洲干潟に東京湾アクアライン(東京湾横断道路)を通すさい、地元の金田漁協は247億円の補償金と引きかえに道路建設に同意しました(増子義久『東京湾が死んだ日』水曜社)。1988(昭和63)年9月のことです。
 また、ホテル三日月が盤洲干潟の隣接地にホテルと大浴場を建設したさい、金田漁協は所有地(埋め立て地。約10万m2)を24億円でホテルに売却しました。1999年4月です。
 この埋め立て地は、県企業庁が同漁協に6億円で払い下げたものでした。ホテルに売却するさい、売却費の一部(2億円)を組合長(当時)が着服しました。それがあとで発覚し、組合長は逮捕されて有罪となりました。
 ようするに、開発が規制されるとこうしたうまみがなくなるということです。だから、三番瀬の3漁協(船橋、市川市行徳、南行徳)と盤洲干潟の金田漁協はラムサール条約登録などに反対しているのです。


拝金思想が横行

 湖山池の話を聞きながら、東京湾と同じだな、と思いました。
 夕刊紙『日刊ゲンダイ』の7月22日号は、「拝金思想と戦争法案という同根」の大見出しを掲げ、こう記しています。
     「『稼ぐが勝ち』の卑しい拝金主義が世の中、すべてを狂わせている」
     「原発再稼働や白紙撤回した新国立競技場の建設も同じ構図だ。裏に見えるのはカネ儲けと利権。国民の生命や安全より、大企業のための原発再稼働を優先するのが安倍政権だ」
     海・山・川・いのちよりカネ儲けが大事。そういう思想が横行しているということです。このような拝金主義にNOを突きつけなければならないと思います。

(2015年7月)










湖山池




湖山川の水門












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