門司の自然と辺野古の海を守るために

〜門司の環境を考える会 八記久美子さん〜









 「門司の環境を考える会」(森下宏人会長)は、北九州市の門司地域を中心に活動をくりひろげています。事務局長の八記久美子さんに話を聞きました。(『全国自然通信』編集部)


「海に廃棄物処分場建設」がきっかけ

──「門司の環境を考える会」はどういういきさつで結成されたのですか。

【八記】2001年4月、「北九州市が新門司の海に廃棄物処分場を建設」という小さい記事が新聞に載りました。「黙って見ているわけにはいかん」と、有志が集まりました。
 集まりのなかで「門司にはほかにも危険なものがいっぱいある」という話がだされ、「それでは実際に見て回ろう」とフィールドワークを2回行いました。
 フィールドワークをやってみて、私たちが一番びっくりしたのは、門司の自然の豊かさでした。そこで2002年7月、門司の環境のすばらしさを知って・楽しんで・守って・再生するために、考え行動する「門司の環境を考える会」を17名で結成しました。門司の自然のすばらしさを知ることが門司の自然を守る力になると思ったからです。
 新聞で報道された計画は、漁協の反対でいまだに工事が行われていません。
 その後、私たちは「門司」にこだわりながら、産廃処分場や白島(しらしま)石油備蓄基地などについてシンポジウム、講演会、行政交渉などを進めています。
 PCB(ポリ塩化ビフェニール)処理の問題にもとりくんでいます。PCBは、電気機器の絶縁油などとして広く使われていた有害化学物質です。国が100%出資する「中間貯蔵・環境安全事業株式会社」(JESCO)が全国5カ所の事業所で高濃度PCB廃棄物の無害化処理を進めています。そのひとつが北九州事業所です。北九州市若松区にあります。
 北九州事業所の処理開始は2004年12月です。九州、四国、中国の17県から排出されたPCBを処理することになっていました。環境省は、PCB1万トンの無害化処理を10年間で完了させたあと更地に返すと約束しました。ところが2013年10月、処理期間を延長しました。そればかりか、処理対象区域を東京以西の31都府県に拡大し、PCBの処理量を6000トン追加しました。排気ガスから基準の11倍を超える有害物質ベンゼンが検出されるという事故も起こしています。安全を約束しながら事故をおこしたことにたいし、私たちは操業の終了を求めています。
 私たちは、学んだり活動したことは会報『門司の環境』で幅広く発信しています。また、なにかにつけ、地元産の材料を使ったご飯とみそ汁の野外会食を楽しんでいます。特大の鍋・釜は屋外活動の必需品です。現在の会員数は110人です。


「ふるさとの土砂が戦争に使われるのはごめんだ」
  〜辺野古土砂搬出反対運動〜

──辺野古埋め立て用土砂搬出反対の運動も進めていますね。

【八記】沖縄防衛局は、辺野古の海の埋め立てに用いる土砂として、沖縄県外からも大量の岩ズリ(岩くず)を調達するとしています。門司地域(山口県の二つの島を含む)、小豆島(瀬戸内海)、五島(長崎県)、天草(熊本県)、奄美大島(鹿児島県)など7カ所からです。その量は1644万?です。そのなかで調達量がいちばん多いのは門司地域です。
 門司地域からの搬出量は740万?です。本土(7カ所)の土砂搬出量の45%を占めます。辺野古の海の埋め立てに使う土砂の35%は門司地域からの調達となっています。
 昨年5月末、「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」が鹿児島県奄美市で設立されました。この設立会議に「門司の環境を考える会」として私も参加しました。「辺野古の埋め立てに使われる土砂の35%は門司地域から」と聞いたら、じっとしておられませんでした。帰ってきて6月20日に「辺野古埋め立て土砂搬出反対北九州連絡協議会」を結成しました。結成総会には11団体が参加しました。
 総会では「ふるさとの土砂が人殺し(戦争)のために使われるのはごめんだ」「ふるさとの土砂で宝のような大浦湾を壊してはいけない」と声があがりました。協議会の事務局長は私が務めることになりました。
 北九州連絡協議会は結成後すぐに署名集めにとりくみました。協議会には市民団体、労働組合、女性団体、法律事務所、九条の会などさまざまな団体が加わっています。いまは参加団体27、個人賛同者117人に増えました。
 それぞれの団体が創意工夫をこらしながら署名集めを進めた結果、3カ月半で1万2500の署名が集まりました。
 現在は1万6000筆に達しています。日本政府は沖縄の人たちを苦しめ、沖縄と本土の自然を破壊しようとしています。そんなことはなんとしてでもやめさせなければ、と思っています。


高校新聞部で習得した技術を活用

──「門司の環境を考える会」は、会報『門司の環境』をひんぱんに発行しています。すばらしい出来栄えです。どのような努力をされているのですか。

【八記】『門司の環境』は会員や環境団体のほか、北九州市環境局、議員、学者、マスコミなどのみなさんに330部配布しています。基本はB5判20ページです。この3月に創刊100号を発行しました。単純に割ると年7回の発行です。
 私はいま、「門司の環境」や「辺野古埋め立て土砂搬出反対北九州連絡協議会」などのニュース(会報)の編集を担当しています。行動をすると、感動したり怒りがわいたりします。そのことをみんなに知らせたいと思う気持ちが自分を動かしてきたと思います。
 私は高校のとき新聞部で活動しました。勉強よりも新聞づくりに熱中していました。そのときに先輩たちに教えてもらったことが、いまたいへん役にたっています。時間があって作るときは至福の時間ですが、時間がないなかで作るのは地獄です。


ストレス解消策

──八記さんは「門司の環境を考える会」と「辺野古埋め立て土砂搬出反対北九州連絡協議会」の両方の事務局長をこなすなど、大車輪の働きをされています。ストレスも感じると思います。それをどう解消しているのですか。

【八記】まず、安くてバランスの良いおいしいお昼ご飯を食べること。それから、意識的に新聞や本を読んで「きょうもいろいろ勉強した」という気分になること。ときにはデパートのバーゲンセールで衝動買いをします。たまに部屋にたまった書類や資料をごそっと捨てたり、意識的に遠くの学習会に出かけて、ちょっと観光を楽しんで帰ってきます。仕事もしているので本当にたいへんですが、ストレスをためないように心がけています。
(2016年4月)








なにかにつけ、地元産の材料を使ったご飯とみそ汁の
野外会食を楽しんでいる=門司の環境を考える会提供




門司の採石場めぐり=門司の環境を考える会提供




「辺野古埋め立て土砂搬出反対北九州連絡協議会」主催の講演会で「基地はいらん」
「宝の海を守ろう」などと訴える人たち=北九州市(門司の環境を考える会提供)




辺野古埋め立て土砂搬出反対署名を安倍首相に提出するさい、
八記久美子さんは「沖縄の人たちを苦しめ、沖縄と本土の自然を
破壊するのはやめてほしい」と訴えた=2015年10月15日、内閣府




門司の環境を考える会の会報『門司の環境』創刊100号(2016年3月号)










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