「原発は民主主義の対極にある」

〜「さようなら原発1000万人署名・千葉」発会記念講演〜







 「集めよう!さようなら原発1000万人署名・千葉の会」の発会記念講演会が(2011年)11月29日、船橋市勤労市民センターで開かれました。講師は、おなじみの鎌田慧さん(ルポライター)です。
 「さようなら原発1000万人アクション」の呼びかけ人でもある鎌田さんは、脱原発の運動で全国各地をとびまわっています。鎌田さんは、原発問題を総括的に、そしてわかりやすく話してくれました。印象的だったのは、「福島原発事故は無関心に対する復讐だ」「原発は民主主義の対極にある」という話です。
 鎌田さんは、脱原発の運動を献身的に牽引しています。ですから、労働組合の幹部などによくみられるような、威勢のいい大言壮語や空念仏はまったく感じられません。とても中身の濃い講演でした。

 以下は講演内容の抜粋です。


講演の抜粋



なぜ原発に反対するのか、これからどのような社会をつくるか


ルポライター  鎌田 慧


■あきらめムードもあったのではないか

 3月11日の福島原発大事故でショックをうけた。これはみなさんも同じだと思う。これまで、私たちは原発反対と言ってきた。しかし、必死になってがんばってこなかったのではないかという思いがある。これは、原発に反対してきた人が共通して抱いている思いだと思う。
 もっと本気で力をつくしてがんばればよかった。しかし、なんとなくあきらめムードもあったのではないか。「原発は危険だ」と言いながら、その危険をみのがしてきた。そして大事故を迎えることになり、これまでの運動の怠慢を未来の子どもたちから突きつけられている。そういうふうに考えるしかないと思う。


■無関心であればそれですむということではなかった

 原発の問題ではっきりしたのは、原発と人間の距離がまったくないということだ。これまでは原発に無関心だったので、そのことにほとんど気づかなかった。また、考えないし、注意しなかった。そういう人たちも被曝の影響を受けることになった。
 これは、無関心に対する復讐といってもよいであろう。つまり、無関心であればそれですむということではなかったということだ。それも、原発が立地する県の住民だけではなく、かなり広範な地域に影響がおよんでいる。ここの千葉も影響を受けている。しかも、その影響はいつまで続くかわからない。


■気づいてみれば、狭い列島に54基も密集

 日本はきわめて狭い列島である。そういう狭い列島に54基も原発をつくってきた。あるいは、つくらせてきた。そういう忸怩(じくじ)たる思いがある。もちろん、反対運動も全国各地でおこっていた。それでも、気づいてみれば54基もある。
 たとえば、アメリカには原発が100基余りある。しかし、国土の大きさがまったく違う。日本の面積はアメリカの25分の1しかない。25分の1のところに、アメリカの半分の原発をつくった。日本列島の太平洋と日本海の両方の海岸にびっしりと原発が並んでいる。しかも、その半分は東北と新潟にある。敦賀湾を含めると、東日本に7割ぐらいの原発が密集している。そして福島で大事故がおきて、日本中に恐怖をもたらしている。


■原発は民主主義の対極にある

 私は「原発は民主主義の対極にある」をスローガン化している。民主主義がつぶされたところに原発がつくられているからだ。それは、全国をまわっての私の教訓である。
 きょうの配付資料に日本の原発立地図が載っている。全国に54基の原発がつくられているが、そのすべての地域で反対運動があった。しかし、反対運動はやぶれて建設された。この地図はそういうことも表している。
 一方では、その地図に載っていないところにも原発が計画されていて、建設をやめさせたところは地図に載っていない。つまり、地域の民主主義が機能して、住民や議会が原発を拒否したところには原発が建設されていないということだ。


■原発建設地では議会の頽廃がみられる

 議会が建設を決定したといっても、きわめて欺瞞的な決定がされている。たとえば青森県の六ヶ所村にはほとんどの核施設が立地している。「下北半島に来なかったのはウラン鉱山だけ」と住民は言っている。このように、ウラン鉱山以外のすべての核施設が下北半島に集中して建設されている。
 1985年に、六ヶ所村の議会が再処理工場を受けいれるという議決をした。しかし、そのやり方はこうだ。「きょうは核施設の問題は議論しない」と言って全員協議会を開き、協議会の最後の段階で議長と町長が結託して議決を強行した。
 村議会の決定を受けて青森県議会も受け入れを議決した。その際も、機動隊に守られて全員協議会で決定した。そういうふうにして、六ヶ所村は、核燃料の再処理工場を受けいれた。このように、日本の核政策の根幹にかかわる原子力施設をつくるという青森県の計画は、議会の欺瞞とか暴挙によってはじまった。
 原発が立地しているほかの地域も、同じような議会の頽廃(たいはい)がみられる。


■住民が地域を民主化したところは原発を拒否

 一方、原発をつくらせなかったところもある。その典型は新潟県の巻(まき)町(現在の新潟市西蒲区)だ。東北電力が原発を計画し、民有地はすべて買収済みだった。町有地だけが残っていた。町長は保守派だからいつでも取得できるということだった。そして、町有地も売却決定寸前になった。
 これに対し、原発に反対する町民たちが原発建設の是非を問う住民投票をおこした。住民投票の結果は反対派の圧勝だった。さらに、町民は町議会議員を替えた。町長も替えた。反対派の新町長は、電光石火の行動で一気に町有地を反対派に売ってしまった。それで原発建設は中止になった。
 このように、町民が運動を積み重ねて地域を民主化したところでは原発を拒否した。石川県の能登半島にある珠洲市や宮崎県の串間市、山口県の下関市、三重県の度会郡南伊勢町・大紀町も原発を拒否した。これらのところは住民の力で拒否した。しかし残念ながら、こういうところは原発立地図に載っていない。


■世論を盛り上げて政治家たちを動かす

 (2011年)9月19日に明治公園で6万人集会をやった。配付資料に載せてあるように、12月10日には日比谷野外音楽堂で集会とパレードをおこなう。来年2月11日と3月11日、3月24日にも集会を開くことにしている。こういうことをやりながら、1000万人署名運動をもりあげたいと思っている。とにかく力をあわせて「原発はいやだ!」という声をあげたい。
 いまや脱原発は常識といっている。問題はいつ具体的に原発をやめさせるか、だ。一つひとつを止めて、再開はさせない。ただ声をあげるだけではなく、具体的にその地域の地方政界や、さらに中央政界に声をあげ、政治家たちを動揺させていく。世論が政治家たちを動かすということだ。そういう運動を着実に具体性をもってやっていくというところにきたと思う。
 そういう意味で、ここに集まった人たちが、ただ署名をするだけではなくて、一人ひとりが何千筆も集めるという、そういう活動家になってがんばってほしいと思う。
(文責・中山敏則)




「集めよう!さようなら原発1000万人署名・千葉の会」発会記念講演会



鎌田慧さん






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