脱原発社会にリニアはいらない!


田原廣美




 「脱原発社会にリニア新幹線は必要か!」と題したフォーラムが(2013年)2月10日、相模原市の橋本で開かれた。

 まず、原発とリニアの関係について広瀬隆さんが講演した。その後、パネリストやコーディーネーターから次のような意見が出された。「リニア建設は科学技術信仰の暴走だ」(阿部修治さん)、「リニアのリスクが国民にほとんど知らされていないのが問題」(橋山禮治郎さん)。

 すると、相模原市津久井在住の女性からこんな手厳しい意見が出された。

 「専門的な難しい言葉で話されても、女こどもには理解できません。リニアのことをもっと分かりやすく話してください。男社会のやり方ではリニア・ストップの運動は広がらないと思います」

 JR東海はリニアを〈夢の超特急〉と宣伝しているが、そのリスクについては口を閉ざしている。携帯電話の200〜500倍といわれる電磁波の影響、活断層を突っ切っての工事、原発数基分の膨大な電力消費、3兆円の借金を抱えての10兆円の工事(東京−大阪間)、工事途中の資金難による税金投入、飛行機・在来新幹線・リニア新幹線の三者による乗客の奪い合いによる共倒れ、南アルプスの地下水脈への悪影響など、そのリスクは数え上げればきりがない。リニア建設が取り返しのつかない自然破壊と大赤字を生み、JR東海が経営破綻するのは明らかだ。

 では、なぜそんなリニア建設を強行しようとしているのか。理由は一つ。ゼネコンや建設関連の大企業が、大きな工事を受注することにより大儲けできるからだと思う。民主党政権のとき、大いに期待していた14基の原発建設は福島第1原発事故で難しくなった。となると、それに代わる大工事がほしい。原発事故直後の2011年5月27日、大畠章宏国交大臣(当時)がいきなりリニア建設にGOサインを出したのは、それを示している。

 リニア中央新幹線の全線開通は2045年というから、ゼネコンをはじめとする大企業は向こう28年間以上食っていける。まさに、救世主だ。

 これは、原発やダムと全く同じ構図だ。戦後から今まで、1616基ものダムと54基の原発、東京湾横断道路などが次々と建設された。これらの公共工事も、リニアと同じようにほとんど情報公開が行われなかった。《ダムの撤去、原発の廃炉と放射能廃棄物の処理、巨大な橋の維持管理と撤去》に今後何百兆円もかかるだろう、ということも。

 これまで、ゼネコンや関連の大企業は大型建設工事で莫大な利益をあげてきた。そして、維持・管理・撤去などの大赤字になる部分は国民の税金で尻拭いしてきた。したがって、とにかく工事をしさえすれば儲かった。戦後から今まで、このように工事のための工事を続けてきたことが、1000兆円を超える国の借金に影響したことは間違いない。

 甚大な自然破壊と膨大な税金のムダ遣いを生む《リニア新幹線》はいらない!

(2013年2月)












335人が参加したリニア新幹線沿線住民ネットワーク結成集会



講師の広瀬隆さん(科学ジャーナリスト)



千葉商科大学客員教授の橋山禮治郎さん



産業技術総合研究所の阿部修治さん



あいさつする沿線地域の住民団体代表



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