「自然と環境を守る交流会」の講演(要旨)

奥山水源の森の大荒廃をどうする

一般財団法人日本熊森協会 会長  森山まり子さん






 奥山水源の森は、私たち都市市民の水道水をはじめ、農業、漁業、工業などあらゆる産業に清らかな大量の水を供給してきた。その奥山水源の森が、今、大荒廃して保水力を失っている。それに気づいている人はほとんどいない。

 クマをはじめとする野生動物たちは奥山からどんどん出てきては、撃ち殺されている。それだけがニュースになる。原因まで考える人はほとんどいない。

 クマが人里にでてくるようになった原因ははっきりしている。奥山にあったねぐらとエサ場がなくなったのだ。ところが、学者たちは、「クマが増えたからだ」「クマが生息地を拡大したからだ」「クマが人をなめだした」「農作物のほうがおいしいと味をしめだした」などと言っている。すべての原因は人間なのに、動物のせいにする。

 私たちは反論した。兵庫県のクマの目撃数をみると、年によって大きく違う。もし学者の説がほんとうだったら、クマは毎年でてくるはずだ。ところが、山の実りがいい豊作年は、クマは出てこない。山が凶作のときは、ドッとでてくる。答えはエサに決まっているということだ。

 ところが奥山自然林の復元は誰もやらない。そこで、私たちは1997年に日本熊森協会を結成し、自然林の復元をはじめた。人工林のスギをどんどん切って、実のなる広葉樹を1万本植えてきた。

 しかし、2000年代になって、ナラ枯れが一気に広がった。広葉樹が枯れだしたのだ。ナラ枯れ被害のひどいところは、日本海側の雪国地帯に集中している。中国の大気汚染による酸性雪が原因の一つではないか。また、ナラ枯れの直接的な原因といわれているカシノナガキクイムシが、地球温暖化によって、暖温帯から冷温帯に移動したのが原因という説もある。

 大気汚染(酸性雨など)、地球温暖化、戦後の拡大造林、みんな人間がやったことだ。保水力をなくした奥山水源の森をなんとかしなければならない。ところが、国は逃げている。マスコミも研究者も逃げる。みんな逃げている。

 この問題にだれが立ちむかうのか。なんのしがらみもない一般国民の私たちが声をあげる以外にない。お金も名誉もなにもいらない。日本の自然、世界の自然を守りたい。そのような考えで集まっておられるみなさんと連携して日本に大きな自然保護勢力をつくり、こういう問題にとりくんでいきたいと願っている。




森山まり子さん






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