「さよなら原発全国集会 in 京都」のスピーチ(要旨)

電源の代わりはあるが、琵琶湖の代わりはない

前滋賀県知事 嘉田由紀子さん






    (嘉田さんは8月末、同乗していた乗用車が事故を起こし胸部を打撲したため、体にコルセットを巻いてマイクを握った)

 みなさん、若狭湾の原発と琵琶湖の距離をご存じですか。琵琶湖と敦賀原発の距離はたった13キロである。美浜原発は20キロ、大飯原発は25キロ、高浜原発は30キロだ。これが福島だったら、双葉町や浪江町などのように、原発が立地する地元に相当する。ところがたまたま県境があるので、滋賀県は安全協定の締結権も、立地自治体並みの同意権ももらわなかった。そこで私は、被害地元という言葉を思いついた。

 万一事故が起きたら、いちばんたいへんなのは立地地元だ。しかし、被害だけ受けるのは被害地元だ。そういうことで、滋賀県は被害地元である。

 琵琶湖の水は、大阪府は最南端の岬町まで、神戸市の西は垂水区まで供給されている。この集会に参加されたみなさんも、ほとんどの方が琵琶湖に世話になっている。つまり、万一、琵琶湖に放射性物質が流れ込んだら、みなさんの蛇口の水が危ないということである。

 2012年夏、当時の野田政権が大飯原発の3、4号機を再稼働させた。知事をしていた私は、「原発再稼働なしにブラックアウト(大停電)が起きたらどうするのか」「経済が破壊される」「病人の命にかかわる」と脅かされた。関西広域連合でも脅かされた。

 そのときはピークカット(使用電力量の削減)がたいへんだった。しかし、今年の夏は記録的な猛暑が続いた。それでも電力需要が90%を超えた日はたったの4日間である。ピークカットができたのだ。

 私は、知事として避難体制づくりを一生懸命考えた。自家用車だと道路が渋滞するので、バスで避難してもらう。ところが、バスの運転手さんに汚染地域に行ってもらう権限は知事にはない。事業者が500台ものバスを滋賀県の高島市や長浜市からだしてくれるのか。ノーである。また、30キロ圏内の住民に安定ヨウ素剤を配布できるのか。そうでなくても、医師不足、薬剤師不足である。このように、いまの避難計画はまったく実効性のない、絵に描いた餅である。

 最後に言いたいことは、人は避難できるが、琵琶湖は避難できないということだ。電源の代わりはあるが、琵琶湖の代わりはない。この関西からこそ、原発再稼働をみなさんの力で止めましょう。いっしょにがんばりましょう。



前滋賀県知事の嘉田由紀子さん






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