「さよなら原発全国集会 in 京都」のスピーチ(要旨)

安倍政権は制御棒なしの亡国政権


ルポライター 鎌田 慧さん





 8月11日、残念ながら川内(せんだい)原発を再稼働させられた。そのときは、川内原発の門前に3日間張り付いた。そして再稼働の直前、「制御棒を抜くな」「再稼働のボタンを押すな」と叫んだ。

 安倍政権は制御棒なしの亡国の政権となっている。そういう政権のもとで私たちは苦しんでいる。日本は、福島原発事故があっても川内原発を再稼働させるような非情の国となっている。

 いま、毎日のように戦争反対のデモが全国でおこなわれている。沖縄では、きれいな大浦湾の辺野古の沖に戦争するための基地がつくられようとしている。

 また、労働者派遣法が改悪され、3年の期限が撤廃された。人を入れ替えれば、企業は派遣労働者を何年でも継続して受け入れることができるようになった。そういうひどい労働条件をおしつけようとしている。残業代は払わない、解雇は自由……。そのように、民主主義社会に反することをやっている。

 このように、安倍政権は、私たちがこれまでつくってきた民主主義を全部破ろうとしている。

 60年安保のとき、私たちは国会を取り囲んで「安保反対」「岸を倒せ」と叫んだ。それから55年たったいま、岸の孫にたいし、「安倍を倒せ」「安保反対」「安保廃棄」「廃案」「安倍はやめろ」と叫んでいる。

 そうすると、この55年間、私たちはいったい何をしてきたのか、ということになる。60年安保闘争で岸を退陣させた。しかし、それ以降、すぐに池田内閣が所得倍増を打ち出した。日本はどんどん所得が増えていくというような時代にさしかかった。そして、日本人はエコノミックアニマルと呼ばれた。政治を忘れて、経済に没頭してしまった。だから55年たって、岸よりもさらに悪い、岸よりもバカな政治家が君臨するようになったのではないか。

 原発は経済成長の最たるものだ。巨大で、大量で、大型で、という合理化の精神でやってきた。経済成長の精神の真先端に原発があって、原発が先頭になってやってきた。それを私たちは阻止してこなかった。そして福島の事故が起きて、ようやく目が覚めた。

 もちろん、私たちは原発に反対してきた。だが、身体を張って反対してこなかった。そういうふうな思いがあっていま、「さよなら原発」「原発はもういらない」ということをやっている。

 福井地裁の樋口裁判長の理路整然たる判決を読んでみると、原発は人権、生存権、人格権とまっこうから対立している。人間社会では原発を許せないというのが、裁判長の見解である。

 そういうふうな裁判長の結論をだしたのは、福島原発事故のあと、私たちがなんとかがんばりぬいてきた、その一つのあらわれだと思っている。

 樋口裁判長は、新規制基準はゆるやかすぎる、それに適応しても原発の安全性は確保できない、ということを明言している。

 新基準をどんなに適応させても、原発の安全の証明にはならない。規制委員会の規制はペテンである。

 ところが、安倍内閣はなんと言っているか。日本の原発は世界でいちばん安全だから輸出する。原発事故を教訓として輸出する。そんなことを言っている。ようするに、人のいのちをふみににじったもので伸びていこうというものだ。

 儲けのために人は死ねという、このような哲学にたいし、私たちは真っ向からたたかっていかなければならない。

 福島第一原発では、労働者たちが被曝に耐えながら働いている。その周辺では、除染労働者たちも被曝に耐えながら働いている。廃炉作業もやりながら、被曝量が増えていく。このように犠牲者を大量につくりながら、なぜ原発を再稼働させる必要があるのか。

 原発がなくても私たちはなにも困っていない。電気は十分足りている。そして、これからは自然エネルギーに向かっていく。原発はなんの意味もなくなったエネルギーである。

 「原子力 明るい未来のエネルギー」。これは、福島県大熊町の小学生が、原子力について標語をつくりなさいと言われてつくったものだ。なんとひどいスローガンだろうか。これはアウシュヴィッツの門に掲げてある「働けば自由になる」というペテンとまったく同じである。それを小学生に書かせている。彼にとっては、これを負の遺産として残してほしいということだろう。

 福島の人たちのことを考えてほしい。住宅ローンが残っているけれども家に帰ることができない。目の前にある家に帰ることができない。そして、仮設住宅でどんどん亡くなっていく。こういうひどい現実があるのに、まだ原発を再稼働させようとしている。

 戦争法案も同じだ。あれだけの批判があっても、安倍首相は成立させようとしている。

 日本人はアジアの2000万人の人たちを殺してきた。その反省があって平和憲法をつくった。それを真っ向から捨てて、アメリカといっしょになって、もういちど戦争しようとしている。こういう歴史に反する非道は許すことができない。私たちは、これからも亡国内閣打倒の運動を進める。

 原発は核武装の重要な武器として使われる。それは佐藤内閣のときに掲げられた文書に書かれている。日本は、核武装のできる能力のある社会、核武装をできる能力のある国として世界に君臨しようとしている。アメリカの子分として世界に君臨しようとしている。

 そして、中国と対立しようとしている。
 日本はかつて、中国の人たちをひどい目にあわせた。それなのに、中国を敵視する。さらに、いまの日本の貿易は中国で成立しているのに、まったく感謝しない。むしろ、バカにしている。そういうことをやっている。

 私は青森県の出身である。青森県六ヶ所村の再処理工場は稼働しない。大間原発のフルMOX(使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料だけで運転すること)の電源開発も原発も稼働しない。すでに、もんじゅも稼働しない。

 原発はもう終わっている。それに最後のトドメをさしたい。そのためには、私たちが大衆的なエネルギーでがんばっていくしかない。きょうもあしたもあさっても、がんばっていきましょう。






「『さようなら原発』一千万署名市民の会」呼びかけ人の鎌田慧さん(ルポライター)






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