リニア計画の凍結・再検証を求める

〜沿線住民ネットが国交省要請と集会〜







 (2013年)6月7日、「NO!リニアデー!」と題した行動と集会がおこなわれました。主催は「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」です。
 はじめに、リニア中央新幹線計画の凍結・再検証を求める要請書を国交省に提出して交渉です。1万7000の署名も提出しました。そのあと、「地震、事故の危険性〜リニア計画の凍結・再検証を求める〜」と題した院内集会を衆議院第一議員会館で開きました。東京、神奈川、山梨、長野、岐阜の沿線住民など98人が参加しました。


◆南アルプスは日本列島で最も活発に隆起している地域

 集会ではまず、地質学者の松島信幸さんが「南アルプス長大トンネル工事の危険性」というテーマで講演です。
 松島さんはこんなことを述べました。
     「リニア新幹線は南アルプスを貫通する。JR東海は、貫通トンネルの長さを20kmとしているが、じっさいは50kmだ」
     「南アルプスは、日本列島で最も活発に隆起している地域だ。標高3000m級の荒川前岳(あらかわまえだけ)の山頂は年々後退している。山頂に設置された三角点は30年前に崩れ落ちた。そんな危険な山岳にトンネルを掘ることになっている。造るのも維持するのも簡単ではない。事故が起きた場合、誰が責任をとるのか」


◆過去の東海地震で南アルプスは大規模崩壊

 つづいて、中央構造線博物館の河本和朗さんが「南アルプスの地殻変動、活断層、東海地震」と題して講演です。
 中央構造線博物館は長野県下伊那郡大鹿村にあります。日本で唯一の中央構造線の専門博物館です。学芸員の河本和朗さんは、日本の中央構造線研究の第一人者です。

 河本さんは、南アルプスの主稜線の30〜40km直下にフィリピン海洋プレートがあることや、南海トラフ震源域が南アルプスの南部まで伸びていること、さらに過去の東海地震によって南アルプスが大規模に崩壊したことなどをくわしく説明し、南アルプスにトンネルを掘ることの危険性を訴えました。

 講演のあとは質疑討論です。沿線各地の参加者から意見が活発にだされました。
     「豊かな生き方とはなにかということを一人ひとりが考えられるようにしたい」
     「リニアはエネルギーとして原発を必要としているので反対だ」
     「リニア中央新幹線は交通ネットワークに入らない。そんなものは意味がない。まったくナンセンスだ」
 JR東海労働組合の方はこう発言しました。
     「JR東海は“トンネルは安全”と言っているが、これは真っ赤なウソだ。東海道新幹線の運転手の間では、“トンネルはいちばん危険な場所だ。地震が起きたら、トンネルを避けて止まれ”が常識となっている」


◆リニア計画はウソで塗り固められている

 最後は、「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」の天野捷一共同代表が閉会あいさつです。こう述べました。
     「リニア中央新幹線計画はさまざまなウソで塗り固められている。私たちの生活が豊かになるという乗り物ではない。一方で、環境や景観などを破壊する。JR東海は来年度中に工事を始めるといっているが、なんとしてでもやめさせたい」
 以下は、国交大臣に提出した要請書です。


要 請 書



2013年5月8日

 国土交通大臣 太田昭宏 様


中央新幹線計画の凍結と再検証を求める要請書

 本日、私たち「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」は住民の意志として、中央新幹線計画(以下リニア新幹線計画)の凍結・再検証を求める1万7千名の署名を提出いたします。

 JR東海旅客鉄道株式会社(以下JR東海)が計画しているリニア新幹線はスピードだけを追求する鉄道であり、採算性、安全対策、環境への影響について、計画沿線住民を中心に、多くの問題点が指摘されています。

 2011年5月、国土交通省交通政策審議会中央新幹線小委員会の答申があり、これを受け国土交通大臣が事業主体・営業主体としてJR東海を指名しました。その2か月前の3月11日、東日本大震災が発生し、三陸沿岸を中心に鉄道も大きな被害を受けました。また、同日の福島第一原発事故以降、ほぼすべての原発が運転を停止し、その敷地内で活断層の調査が行なわれています。活断層が認められた原発は廃炉になるとされています。

 リニア新幹線は東京から名古屋まで数多くの活断層を横切ります。いったんそこで強い地震が発生したら、リニア新幹線は重大事故に遭う危険性が高いと私たちは考えます。また、南アルプスに長大トンネルを掘ることは、最大の自然破壊行為です。すでに、山梨実験線の延伸工事ではトンネル掘削で地下水が枯渇する事態が起きています。

 JR東海は、現在、最終的な建設工事準備へ向けた環境調査を実施しており、今年秋には正式ルートや中間駅、車両基地、立坑などの立地場所を明らかにするとしています。

 計画が明らかになって2年経ちますが、私たち計画沿線住民はこれまで、安全対策、環境対策、電磁波対策、電力消費量、騒音・振動のレベル、トンネル掘削工事の進め方、残土処理の方法など不安な問題について、JR東海から具体的で詳細な説明を受けていません。

 国土交通大臣におかれましては、リニア新幹線計画が内包するこうした問題点についての私たちの切実な声に耳を傾け、計画をいったん凍結し、再検証するよう強く要請します。

 2013年6月7日

リニア新幹線沿線住民ネットワーク





「地震、事故の危険性〜リニア計画の凍結・再検証を求める〜」と題した院内集会







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