共に生きる社会をめざしたい


田原廣美





 国と財界(=大企業)は明治から現代まで、国民の生活を犠牲にし、自らの利益のみを追求してきた。それは、太平洋戦争はもちろん、足尾鉱毒事件や水俣病や福島第1原発事故だけを見ても明らかだ。古河鉱業、日本窒素肥料水俣工場、東京電力は、鉱毒、水銀、放射能の垂れ流しを隠し、現地住民の命を危険にさらしてきた。そればかりか、大企業の利益を守るために被害者認定を厳しくし、賠償金の支払いさえ渋ってきた。

 戦後の動きで特筆すべきは次の6つだ。

 第1は、教科書検定、日の丸君が代の強制、2006年の教育基本法改悪、これらによる国家権力の教育支配である。

 第2は、民営化による相互扶助(助け合い)の破壊だ。国鉄・電電公社・郵政の民営化がそれである。安倍政権になってからは、保育園・公民館・図書館・介護施設の民営化も進んでいる。<民営化される>ということは、最終的に<自己負担になる>ということだ。

 第3は派遣法だ。小泉首相の時、労働環境を最悪にする世紀の悪法ともいうべき派遣法が制定された。これは雇用者側の利益だけを考えた法律だ。派遣社員ならボーナスも退職金も支払う必要はない。年金と国民健康保険の積み立てもしないで済む。したがって、正社員の約半分の賃金で雇える。しかも、雇用者の都合でいつでも解雇できる。派遣社員は労働組合をつくることさえできない。

 第4は、大企業や富裕層の減税がひそかに行われてきたことだ。過去25年間の消費税収入264兆円は、結果的に法人税の減収246兆円の肩代わりになっている。また、<輸出戻し税>によって、輸出企業は輸出金額の消費税分を払い戻されている。

 第5はムダな公共工事の多さだ。不必要なダム、大赤字の続く東京湾アクアライン、ムダなトンネル、諫早湾干拓工事、無意味なスーパー堤防工事。そして東日本大震災後は住民無視の防潮堤工事が行われている。

 第6は日米の急速な軍事一体化と日本での軍産共同体の出現だ。防衛省幹部が嬉々として、外国への武器売り込みを始めた。

 以上のことから明白なのは、国と財界は一貫して国民をだまし、国民の命と生活を犠牲にし、金もうけに走ってきたということである。それは安倍政権によって頂点に達した。数を頼みに、民主主義ならぬ多数決主義で何でも強行し始めた。無責任な「原発輸出」と「原発再稼働」、現代版治安維持法ともいうべき「特定秘密保護法」、武器輸出を解禁する「自衛隊防衛装備移転」、他国の戦争に加担する「集団的自衛権行使」、沖縄県民を無視した「辺野古への基地移設」。小選挙区制というペテンによって、有権者のわずか6分の1の得票で多くの議席を確保したことで、安倍政権は福祉を切り捨て、武器輸出企業の資金援助や法人税の大幅減税など、さらなる財界寄りの政策を打ち出した。安倍政権の最終目的は、国民が政治家を縛り戦争を許さない今の日本国憲法を、政治家が国民を支配し自ら戦争できる「自民党草案」に改悪することである。これだけは絶対に許してはならない。

 雇用の不安定さからいま、次のような若者が増えている。「運転免許が取れない」「車が買えない」「年金積み立てができない」「結婚できない」「子どもを持てない」。若者の生活を壊し、武器輸出でもうけようとする国に、未来はない。

 政治への無関心は国家権力の暴走を生み、国民生活に測り知れない影響を及ぼす。4月の統一地方選挙と来年の参院選で現政権の暴走にきっぱりNOを突きつけ、<お互いに支え合って共に生きる社会>を目ざしたい。
(2015年1月)




★関連ページ

このページの頭にもどります
前ページにもどります

[トップページ]  [報告・主張] [動き] [決議・意見書] [全国交流会] [自然通信] [出版物]