辺野古埋め立て計画の中止を求める

〜環瀬戸内海会議が環境・防衛両大臣と沖縄県知事に要請〜







 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、名護市辺野古(へのこ)の埋め立て計画が重大な局面を迎えています。(2013年)12月27日、仲井真弘多沖縄県知事は公有水面埋め立て申請を承認しました。

 これに先立ち、環瀬戸内海会議は12月24日、環境大臣と防衛大臣にたいし、辺野古周辺の埋め立て計画の中止を求める要望書を提出しました。また、沖縄県知事に埋め立て計画に同意しないよう求める要望書を提出しました。

 要望書では、埋め立てのため岩石の搬出が計画されている瀬戸内海は環境保全が極めて重要な地域、と指摘。辺野古・大浦湾の環境にも甚大な影響をおよぼすとして、即時中止を求めています。

 環境省と防衛省を訪れた松本宣崇事務局長は、「来年は瀬戸内海国立公園指定80周年。乱開発が繰り返された瀬戸内海の景観をさらなる採石で損なわないでほしい」と訴えました。

 環境大臣と防衛大臣に対する申し入れには環瀬戸内海会議の松本宣崇事務局長など6人が参加しました。沖縄県には阿部悦子共同代表と青木敬介副代表(播磨灘を守る会代表)が出向きました。

 防衛省沖縄防衛局が沖縄県に提出した埋め立て承認申請書によると、埋め立てに用いる土砂のうち岩ズリ(岩をくだいたもの)の採取場所として、県外7カ所、県内2カ所があげられています。そのうち瀬戸内海エリアでは香川県小豆島から岩石30万立方メートル、山口県黒髪島などから同740万立方メートルを政府が購入するとされています。



 ■辺野古の埋め立てに用いる岩スリの採取場所とストック量(使用量)

  ◇県内
   本部地区    620万立方メートル
   国頭地区     50
  ◇県外
   徳之島地区       10
   奄美大島地区    530
   佐多岬地区       70
   天草地区        300
   五島地区        150
   門司地区        740
   瀬戸内地区       30

    合計     2,500(1,644)

  ※( )内は使用量。門司地区は山口県黒髪島など、瀬戸内地区は小豆島。


 以下は、要望書の内容です。


環境大臣・防衛大臣あての要望書



 環境大臣 石原 伸晃 殿
 防衛大臣 小野寺五典 殿


環瀬戸内海会議
共同代表 阿部悦子
石井 亨
副代表 青木敬介
倉橋澄子


 沖縄県米軍基地移転拡張計画に伴う辺野古周辺の埋め立て計画の中止を求めます。

 私たち環瀬戸内海会議は、瀬戸内海沿岸の市民・住民30団体と市民を構成員とする団体です。1990年の結成当時から瀬戸内海の変遷に立ち会ってまいりました。

 今般、沖縄の米軍普天間基地移転拡張に伴う辺野古周辺の埋め立てに瀬戸内海圏域から、加えて法を無視せんとばかりに瀬戸内海国立公園地域からも、岩ズリ等が掘削され沖縄に運ばれて埋め立ての基材とする計画を知るに至り、同埋め立てを中止していただきたく、ここに強く要望するものであります。

 同計画のあり方が、国民を二分する極めて重要な課題であり、国民、特に沖縄県民のコンセンサスが得られているかどうかは国民的関心事であります。そればかりではなく、同計画に基づく公有水面の埋め立て許可申請によれば、埋め立てに要する岩ズリ1,644万立米の内訳の中に香川県小豆郡小豆島町(小豆島)、並びに山口県周南市(黒髪島)からの搬出が計画されています。これらはいずれも自然公園法に基づく瀬戸内海国立公園に指定された地域です。

 本来、国立公園とは「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的」としたものです。特に瀬戸内海は、人の暮らしや営みと共存する閉鎖性海域として、世界でも稀有な存在とされ、そうであるが故に、人の行為から環境を保全し生物多様性を維持することが極めて重要かつ困難な地域であることは周知の事実です。

 私たちは、こうした背景を受けて瀬戸内海環境保全特別措置法の改正を求める活動に取り組んでいますが、一方で瀬戸内海環境保全知事市長会議においても、瀬戸内海は継続的な赤潮の発生、藻場・干潟の減少、貧酸素水塊の発生などの問題が指摘され、環境保全、生物多様性維持など再生を求めて、新法制定要請が出されているところです。

 加えて、広島県福山市鞆の浦の港湾埋立て架橋計画に差し止めを求める住民の訴えに、広島地方裁判所は2009年10月、「鞆の浦の景観は……瀬戸内海の美的景観を構成し、……文化的歴史的価値を有する景観として国民の財産ともいうべき公益である」として、事業計画に「待った」をかけました。この判決は、鞆の浦のみならず、瀬戸内海の自然景観、文化的歴史的景観が公共事業により損なわれる利益を考量することを行政側に強く求めたものと確信しています。

 他方で、辺野古・大浦湾が、南西諸島に残された希少な沿岸生態系を有し、科学的に見ても優先的に保全すべきエリアの一つであること。その環境に甚大な影響を及ぼす計画は、生物多様性を保全する立場からは、決して容認できないとしてWWFをはじめとして多くの中止要請が出されています。これらはいずれもわが国の将来を思えば看過出来ない事実であり、とうてい容認できません。

 本埋め立て計画を即時中止していただきたく、ここに強く要望いたします。



沖縄県知事あての要望書



 沖縄県知事 仲井真 弘多 殿


環瀬戸内海会議
共同代表 阿部悦子
石井 亨
副代表 青木敬介
倉橋澄子


 沖縄県米軍基地移転拡張計画に伴う辺野古周辺の埋め立て計画に同意しないことを求めます。

 私たち環瀬戸内海会議は、瀬戸内海沿岸の住民30団体と個々の市民を構成員とする団体です。1990年の結成当時から瀬戸内海の変遷に立ち会ってまいりました。

 今般、沖縄の米軍普天間基地移転拡張に伴う辺野古周辺の埋め立てに瀬戸内海圏域から、加えて法を無視せんとばかりに瀬戸内海国立公園地域からも、岩ズリ等が掘削され沖縄に運ばれて埋め立ての基材とする計画を知るに至り、同埋め立てに同意しないで頂きたく、ここに強く要望するものであります。

 同計画のあり方が、国民を二分する極めて重要な課題であり、沖縄県民、特に名護市民のコンセンサスが得られていない中で、政府が工事を強行する暴挙は絶対に許されません。そればかりではなく、同計画に基づく公有水面の埋め立て許可申請によれば、埋め立てに要する岩ズリ1,644万立米の内訳の中に香川県小豆郡小豆島町(小豆島)、並びに山口県周南市(黒髪島)からの搬出が計画されています。これらはいずれも自然公園法に基づく「瀬戸内海国立公園」に指定された地域です。

 本来、国立公園とは「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的」としたものです。特に瀬戸内海は、人の暮らしや営みと共存する閉鎖性海域として、世界でも稀有な存在とされ、そうであるが故に、人の行為から環境を保全し生物多様性を維持することが極めて重要かつ困難な地域であることは周知の事実です。

 私たちは、こうした背景を受けて「瀬戸内海環境保全特別措置法」の改正を求める活動に取り組んでいますが、一方で瀬戸内海環境保全知事市長会議においても、瀬戸内海は継続的な赤潮の発生、藻場・干潟の減少、貧酸素水塊の発生などの問題が指摘され、環境保全、生物多様性維持など再生を求めて、新法制定要請が出されているところです。

 加えて、広島県福山市鞆の浦の港湾埋立て架橋計画に差し止めを求める住民の訴えに、広島地方裁判所は2009年10月、「鞆の浦の景観は……瀬戸内海の美的景観を構成し、……文化的歴史的価値を有する景観として国民の財産ともいうべき公益である」として、事業計画に「待った」をかけました。この判決は、鞆の浦のみならず、瀬戸内海の自然景観、文化的歴史的景観が公共事業により受ける不利益を考量することを行政側に強く求めたものです。

 もちろん、辺野古・大浦湾が、南西諸島に残された希少な沿岸生態系を有し、科学的に見ても優先的に保全すべきエリアの一つであること。その環境に甚大な影響を及ぼす計画は、生物多様性を保全する立場からは、決して容認できないとしてWWFをはじめとして多くの中止要請が出されています。これらはいずれもわが国の将来を思えば看過出来ない事実であり、とうてい容認できません。

 本埋め立て計画同意しないでいただきたく、ここに強く要望いたします。




環境省に要望書を提出する松本宣崇事務局長(右)=環境省で




環境省の国立公園課と閉鎖性海域対策室に計画中止を求める




防衛省に要望書を提出する松本宣崇事務局長(右)=防衛省で




防衛省施設技術官付に計画中止を求める




辺野古の埋め立て承認申請書では、埋め立てに用いる土砂などの採取場所として、
小豆島から岩ズリ30万立方メートルを調達すると記載されている。
写真は、香川県小豆郡小豆島町福田地区の砕石場=環瀬戸内海会議の松本宣崇事務局長撮影





香川県小豆郡土庄町灘山の砕石場=同




香川県小豆郡土庄町灘山の砕石場=同




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